第4章 保護者
 保護者とどのように協力していくか 
私は、若いころは保護者と話をするのがとても苦手でした。なかなか本音を言ってくれない親の気持ちがわからず、(4/)よく衝突していました・・・・。
 しかし、子供たちを育てていくためには、教師だけの力では絶対にダメだということを痛感してからは、保護者に教師の気持ちを分かってもらうことに全力を尽くしてきました。
@家庭訪問・三者面談
  私にとってはとても不満なのですが、最近は家庭訪問がほとんどされずに、三者面談で代用されているようです。保護者と二人三脚で、本気になって子供一人一人を良くしていくためには、家庭訪問が不可欠だと私は思っています。
 三者面談の場合でも共通するところがあると思いますので、私の家庭訪問のやり方を書いてみます…。私のころは、通常5月に約1週間をかけて午後家庭訪問が行われました。5日間で回るとすると、1日約7人?8人です。私の場合は、最高でも1日6人にして、仕事の関係上どうしても平日の昼間は時間が取れない場合は、土曜日の放課後か日曜日、あるいは夜の6時以降に回したりしました。父親が話したいという希望の場合は、夕食時に晩酌につきあいながら、(私は一切飲みませんが)お話を聞くということもしばしばありました。とにかくここで、しっかりとした信頼関係を築き保護者と力を合わせて子供を育てていくことが絶対に必要だと思ったからです。訪問時間は1軒が、移動時間を含めて40分に設定しましたが、どんな場合も最終のお宅に伺うのが予定より2時間くらい遅れてしまいます…。玄関先で、15分くらい話をするので良いという意見もそのころありましたが、わずか15分で、お互いの本音を分かり合うなんてできないと思っています。
 では、どんな話をするのでしょう…『「お宅のお子さんは、授業中落ち着きがありません。』『よく忘れ物をします。』『宿題を提出しません、家庭学習をしっかりさせてください』・・・・・などという話は一切しません。親としては、そのようなことだったら十分に分かっているのです。そんな話を聞くために、時には仕事を半日で切り上げて家で待っている親の気持ちにもなってください。私は、家庭訪問の前に、最低でもその生徒の良いところを3つ以上書き上げて伺います…。『静かでおとなしいようですが、クラスでは友達にとても優しくて責任感があるのですよ…。』とか、『すごく活発で、クラスを明るくしてくれるし、何でも気軽に引き受けてくれるところがあるのですよ。』とか、「一見頑固なようですが、とても正義感があるし、物事を深く考えるところがあります。』『誠実で、ノーともとり方も几帳面ですが、時には几帳面に書きすぎて、黒板に書かれたことが書ききれない時があったり・・・・。』とか、まずはその子の長所を何とか見つけ出して、親に伝えることから始めます。(1ヶ月くらい自分のクラスの生徒として付き合っていて、良いところが一つも見つからないとしたら、それは教師の責任だと思います。)次に、親から見てその子の良いところを話してもらいます。担任が気が付かなかったけど、とても兄弟思いのところがあったり、
家庭ではとても素直な子であったり・・・・。新しい発見がいっぱいあると思います。
 そうやって、親と教師で、ともにその子の長所を探し出すことにより、お互いの深、い信頼関係が生まれてくるし、その子のどのようなところを伸ばし、どのようなことについては協力して直していってあげたらよいかが見つかってくるものなのです。また、私は必ず『子供は未完成人間なのです。これからどんどん良いところを伸ばしていきながら完成された人間に育てていきましょう!』というようなことを必ず話します。もともと悪い子なんて絶対にいるわけがないのですから…。そんな話をしていると、あっという間に30分以上たってしまいます。後は、困ったことがあったら何でもいいから、私のところに電話してくださいとお願いしてその家を辞します。
 三者面談の場合も全く同じことだと思います。まずは良いところを生徒とともに確認して、その後、これからどのように頑張っていけばよいかについてじっくり話し合っていけばいいのです。しつっこいようですが、大切なことはお互いの信頼関係をどのように築いていくかということなのです。(私たちが病院で診察を受けるときに、その医者に対する信頼感がなければどんなに良い薬をもらっても、なかなか良くならないのと同じだと思います。)
A保護者会をどのように持っていくか。
 一度顔を出しただけで、二度と出席しない保護者がいるということはどういうことでしょうか・・・・。それは、その人にとって、何の益にもならない無駄な時間だったと感じたからです…。担任としてはせっかく忙しい中出席してくれた保護者の皆さんに、何かお土産を差し上げなければいけないのです。出席してよかったなあと満足して帰ってもらうように精一杯工夫しましょう。(4/8)
・事前に用意しておくもの
ア。席のところに置くことのできる生徒名の名札
    (B5大の画用紙を二つ折りして作っておきます。)
イ。一人一人の生徒の最近の様子。(良かった点を中心にノートにメモしておく。)

ウ。テストの点数など、成績の資料。
 私は保護者の方の自己紹介はお願いしません。たとえば、外国籍の家庭とか、複雑な事情を持った家庭などがあると思うので、それが負担で保護者会に出席しないというようなことがないように配慮したいと思っていました。そのかわり、私が用意した生徒の名札を読み上げ、手を挙げてもらって「がんばってますよ!」とか、「最近すごく前向きになってますね。」などと、一言添えてその方の机の前に生徒の名札を置いていきます・・・・。
 その後、学年初めてのクラス懇談会の場合は私自身の自己紹介をやり、その後クラスの最近の様子を少し大げさにほめながら説明します。
 先生によっては、自分のクラスの欠点や愚痴のようなことから話し始める場合がありますが、私はいちばんよくないパターンだと思います。担任がわが子たちの良いところをしっかりとみてくれていることを知って初めて担任への信頼感がわいてくるのです。

B班日誌や個人ノートに保護者の意見を書いてもらいましょう。